「ロング・エンゲージメント」

事前にどういうものなのか、中身を知らずに、ジュネの映画だ、ってことしか知らずに、観に行ったので、正直、最初は、びっくりした。うわー、戦争かー、って。しかも、なんか、微妙にグロい。って、まあ、それはらしいといえばらしいよなあ、って感じなんだけど、感想は、おもしろかった。ほんと。2時間半くらいあると、僕、すっごいおしっこが近いから、それだけでドキドキなんだけど、なんていうか、まあ、長さを感じないくらいだった。
出だしが、すごい、とっつきにくいかも、っていう印象はあるんだけど(登場人物が誰が誰なのか、いまいちわかりにくい。それくらい最初にいっぱい出てくるし、兵隊の格好してると余計にわからない)、でも、なんかどんどん話にひかれていく。
すごい映像がきらきらしていて、戦場での暗くて土臭くてどろどろな画と印象的に、主人公の女の人(オドレイ・トトゥ)の実家の場面とか、村の様子、光が降り注ぐ自然の風景があまりに美しかったのが印象的だったよ、ほんとに。それがすごく対比的で、いいなあ、と思う。

なんていうか、すごい冷めた目で見ると、お嬢のワガママ探偵記、という感じがしないでもないんだけど、その「他人を巻きこんでの(行方不明の)恋人探し」っぷりもまた、愛ゆえ、というか、その一心不乱さが、途中に挟まれたエピソードで、なんとなく説得力を持つというか、とにかく、恋人を思っての必死さ、というのが、ポイントだなあ、と思った。主人公の女の子と同じ立場に置かれた、ティナという女性は、反対に、戦場で(恋人に対して)成された行為に対して復讐、という形を取るのに対して、主人公は、憎しみよりも、過信といえるほどの希望を持って、謎に挑むわけで、その違う方法で進んできた二人が、最後の方で、お互いに出会って、会話を交わす、というその瞬間もまたすごい良かった。

あと、いきなり、ジョディ・フォスターが出てきたのには驚いた。すっごい嬉しかった。いやー、おもしろかった。かっこいいなあ。素晴らしかったです。さすがに。完全に、思いこみなんだけど、ジョディ・フォスターの演技が、すごい圧倒的だった。そんな気がした。気がしただけだけど。ちょっとした脇役に過ぎない、ってのにもったいないくらいの存在感だった。まあ、エロシーンがあったから、とかそういう理由だったりもするんだけど。

基本的に、恋人は記憶をなくしたまま発見されるわけなんだけど、その状態で再開するシーンは、すごく美しいなあ、と思った。恋人のセリフが、なんか、すごい泣かせる。記憶を失っても、その人の本質は同じ、と言葉にすると、すごい陳腐でバカバカしくも聞こえる設定なんだけど、美しい映像と相俟って、それとこれまでの主人公の苦労して、信じて信じて信じぬいて探してきた過程があると、とても感動的だ。なんか、記憶を取り戻していようがいまいが、結局、恋人と再会できるなら、なんか、ハッピーエンドすぎるよなあ、甘すぎるんじゃないかなあ、という気持ちがあったんだけど、実際に、その場面になると、ぐっときた。ほんと、陳腐で、運命とか永遠の約束、みたいな恋愛とか、ぷー、って感じなんだけど、それでも、嫌じゃなかったなー、というか、ほんと感動したし。

僕がこの映画が好きなのは、単にエグイ戦争物とそれに絡めた愛、という話の流れの中に、きっちりと、いやらしいところがあって、すごく意地悪な部分があって、遊びの部分、というか、話の大筋には関係ないけれど、いかにもジュネらしい、おもしろエピソード(郵便の配達員とか)が、盛りこまれているところだったりする。
いろんな登場人物の設定とかも好きだ。味があるというか。クセがあるというか。そういうわざとらしかったり、いやらしいようなキャラが出てくるところが、好きだなあ。細かいところでぐっとひかれていくので、上映時間が長くても飽きなかったんだと思う。

あまりに、たくさんの人が出てきて、本筋に絡むエピソードの部分で、消化できてないところも結構あるのだけれど、そこをきちんと丁寧に描きすぎると、もっと長くなるし、だからと言って、先ほど言ったような、ジュネらしい、というようなキャラの描き方の部分を省いたりすると、魅力は半減してしまうし、しょうがないのかなあ、と思う。しかも、話としては、一応、ハッピーエンドなので、そこらへんを(原作に沿って)まとめる上でも、なんだかな、もったいないなあ、というところもどうしても出てきてしまうから、そうした部分で、無理なところはいくつかあったのが、残念ではあるよなあ、と思う。

でも、全体的には、おもしろかった。いい映画だと思う。充分とっつきにくいけれども、それでも、らしさ、ってのはあるので、好きな人は好きな映画じゃないかなあ。って感じがします。