「ハートを打ちのめせ! 1、2巻」ジョージ朝倉

ハートを打ちのめせ! 1 (Feelコミックス)
書店で、なんだか、いかにも、な感じのところに置かれている漫画がいろいろとあって、それは本屋によってくくりが違うけど、例えば、松本大洋だとかカネコアツシだとか、南Q太、とか、そういう感じのコーナー。そういうコーナー。最近なら恋の門とか。
もちろん、書店によって、そういう枠組みは違うし、それぞれのファンの人からは、あれと一緒にすんなよ、とかあるんだろうけど、まあ、なんだか、僕の中では、そういう漫画、ってのがある。パルコブックセンター、みたいなところにあるような。そういうやつ。

で、もちろん、そういう漫画は嫌いじゃないし、というか、むしろ好きで、最初に松本大洋とかカネコアツシだとかを例として出したのは、そういう枠組みだ、という認識がありながらも、好きだ、っていう思いがあって、とにもかくにも、前置きが長いけれど、そういう枠組みだからこそ、かっこつけ、みたいな形で敬遠するよりも、どこまで行ってもただの漫画だ(それはどこまで行ってもただの映画だ、ただの音楽だ、ただの小説だ、と言うふうに言えると思う。時に分類は必要だけど、分類を、敬遠する理由にはしたくはなかったりするし、そう思うのは、そうでありたいと思うのは、日ごろから、ああ、これはJポップだからいや、とか自分が思ったりするからだし、その中でもいい曲とか好きなのはあるはずなのに、それで敬遠したりするのは、もったいないなあ、と頭では、なんとなく思ったりするから、だけども、なかなか頭はカチカチで、ピチカートみたいな方法論って嫌い、とか思ってないのに思ってみたり、そういうことがあるから、という長いカッコ内の補足的説明、あとの文章とつながるのか、カッコを閉じるのが不安だったりもする、そういう状況。拝啓 おかあさん、お元気ですか、とますます脈略を無くすことを書いたりしてみる)、という認識であったほうが楽しみたいから、漫画読んだりしてるのに、もったいないよな、と思う。
まあ、もちろん、そういうオサレかも。オサレじゃん、とか思って読んでもいるわけだけど。

そして、そういう僕の中では、一括りにされる漫画の中に、ずっとジョージ朝倉の作品があって、それって、僕の中では、なかなか読むタイミングがなかった。コージィ城倉と名前がかぶっている感じがして、どうしても「砂漠の野球部」のイメージがあって、それはそれで好きなんだけど、全然、ジャンル違うじゃん! とか思いつつ、オサレとは違うじゃん。とか思いながら、買うのは後回しになっていた、という気がする。全然、別人だし、絵も違うわ、って分かっていても、頭に浮かんでくる、砂漠の野球部。懐かしい。砂漠の野球部が読みたくなってくる。

というわけで、別の漫画の話になりそうな中、元に戻すけど、ジョージ朝倉のを、読んでみたわけだ。
すっごいおもしろかった。なんか、ひりひりした。リアルじゃないけどリアルだ、と思った。なんていうか、描かれている人たちの気持ちが、いちいちリアルかも、って思った。ひりひりと痛い、というか。
中学生の恋愛を登場人物を変えて、一話ごと、描いているんだけど、なんだか、中学生の性とか、すっごい飛んでいて、これ、設定、中学生である必要あるのかなあ、とかすら思うんだけど、だけど気持ちの動きとかもめちゃくちゃで、そのめちゃくちゃ、脈略がありそうでないところとかがなんとなく、リアルで、ひりひりとして、独白がいいなあ、と思った。
中学生って、まあ、性的に進んでいたとしても、もっと子供だし、もっとバカだし、それだと話にならないんだけど、話になるとしたら、稲中みたいなところなんだろうけど、それって、すごい性的な距離感が、あの当時では、リアルだし、バカだったわけで、そういうところが僕はおもしろかったんだけど、なんか、ほんと、すごい立派で。いちいち大人で。大人じゃないし、バカなんだけど、その、僕の中での、イメージよりもかなり大人な印象で。
もちろん、どちらが正しいとかじゃなくて、これはこれでおもしろいんだけど。いや、まじでおもしろい。好きだ。
作者本人が、中学生版ロマンポルノ、って言ってるから、狙い通りなんだろう。
一つ一つのエピソードがとても象徴的で、印象に残る。後味もよくなかったりするものもきちんと入っているので、なんか、そういうのもいいなあ、と思う。

それぞれの話、それぞれの主人公が、別の話では、脇役になっていて、そういう構造的な作りも読んでいて楽しい。
あっという間に、2巻とも読んだ。
男の子と女の子のどっちのモノローグでも違和感がなくて、いいなあ、と思う。実際、女の人が読んだら、女の子のセリフとかに違和感があるのかもしれないけど、僕が読んでいる分には、とてもいいなあ、と思うし、そういう気持ちのぐちゃぐちゃ部分とか、揺れ動き、脈略の無さ、根拠が無いところでの脈略、とかそういうところがリアルに思えて、だからこそ、恋愛は痛い部分とか多くて、ひりひりして、おもしろかった。