「THE ANSWER」鈴木剛介

THE ANSWER
積読、という言葉がすごい嫌いで、積読も読書のうち、という感じは分からないではないんだけど、自分の中では、読まなきゃ読まなきゃ、という強迫観念みたいな感じになってくるのがいやで、その買って読まれていない本へと、こいつめー、と変な嫌悪を抱いてしまう方向が、自分でバカらしい、とか思ってしまって、そういうのも含めて、いやだ、積読
だけど、してしまう、積読

この本も、夏に買ったはいいけど、ずっと読まないで、いつ読むのだ、と思い、お前、読みにくい、とこの本に対して思うほどになり、ああ、無理だ、もう読まない、と感じていたんだけど、実家に帰ったら読む時間あるぞ、ってことで、読んだ。
読んだよ。

ああ。なんて言っていいのか、分からない。哲学の小説、と言えばいいのか、それもわからん。とにかく、コピーというか、帯がすごい。哲学をエンタテイメント、みたいな感じがしている。
そして、それをどうやら真に受けて、僕は買ったらしい。らしい、ていうか、その通りなんだけど。それで、だいぶ時間が空いてから読んだわけだ。
読んでいて、確かになあ、と思うところがすごいある。難しいことはよくわからないんだけど、いろいろと今まで聞いたようなことがある部分をわかりやすく書いているし、結局のところ、ポストポストモダン、という状況をどうするか、というところに尽きる気はする。全然、言っている意味が自分で分からないんだけど、なんていうか、僕の読んだ感じとしては。
もちろん、もう、戯れの時代はとっくに終わっていて、未だに実用的な価値観を生み出せない、理論上でしか、現実に即していない、そういう頭でっかちな学問やら研究、ってものが、僕にはよく分からないんだけど、それはそれで大事なことだとも思うんだけど、なんだろう、とにかく、理論のための、モデルケース、フィールドワーク、とかそういうのは、果たして役に立つのかどうか、だけど、役に立つとかそういうこととかって、意味があるのか、んー、よくわかんないなあ、あらゆることがわからん。じゃあいいや、じゃあ、戯れてればいいや、とか結局思ってしまって、未だに、人生に意味があるとかないとか言いたくない、とか思うし、だけど、意味がないならないで、それでどうするのか、というのをそれぞれが抱く状況とかってあるのかないのかわかんないし、んー、じゃあ、いいや。もういい。なんか、めんどくさい。
という感じがあったりするので、こういう哲学的な話を読んでも、なるほど、と思っても、ぴんとこないなあ。
もちろん、中身が僕には、易しく書かれているにしても、難しい、全部が理解できない、というところがあるし、多分、作者本人が言いたいことの半分も伝え切れているかどうか、とも思うんだけど、どうなんだろう。

ただ、実際に、この作品の中で提案している方法論(哲学的、というか、革命的な組織におけるボトムアップシステム、と説明がきちんとできない。ごめんなさい、自分で書いて、言ってる意味がわからない)を、自分の仕事先で実践あるいは試しているところが、なんだか、学問とは違う気がして、それはいいなあ、と思う。僕にはぴんとこない方法論なんだけど。
そして、この作品を元々自主出版で出していた、というところもまたすごいなあ。すごいパワーを持っている人だ、自分を信じるパワーと、考え抜くパワー。
すごく消耗しそうな生き方だなあ。とつくづく感心する。

物語、という意味では、全然、物語でもなんでもなくて、人物も動いても生きても無いし、ぐるぐるとしたうねり、みたいなものは皆無で、ただ、自説を小説(といえるのかわからないけど)にうめこんだ、という感じがして、それはそれで新鮮で、おもしろいなあ、と思うけれど、そこも膨らます余地は全然あるし、そしたら、この中身を受け付けない人でも、もっと読みやすいし、おもしろいのかなあ、と思う。帯に書いているような、エンタテイメント性は、あるのかなあ、という感じがするので。

一番、肉付けがある文章が(作品内の自説が薄い、とかじゃなくて、読み物、としての、人物が見えるという意味での肉付け)、とても長いあとがきの部分だったりするのが、それはそれで刺激的だった。春樹のアンダーグラウンドに話が及んでいて、その辺りの関わり具合が、生き生きとした文章でおもしろかった。

とにもかくにも、これを読んで、価値観が変わることは全くなくて、まあ、そういう考えもあるわなあ、と未だに、相対でしか捉えていないなんて、ほんとお戯れだよなあ。こんなのって。
とにかく、おもしろかった。