「彼氏彼女の事情19巻」 津田雅美

彼氏彼女の事情 (19)
出たよ、19巻。まだまだ続く、怜司の回想シーン。というわけで、だるいなあ、と思ったけれど、読んでみたらおもしろかった。それは、なんとなく、見えなかったところが、いろいろ見えてきた、明かされた、というからなのかもしれないけれど。だけど、その、見えた、という感じと、いろいろな部分と、カッチリはまった、という感想が、楽しく思えた、ってのは、心地よくて、わくわくする。また続きが読みたくなるし。
だけど、今更ながら思うけど、あんまり天才の描き方が上手じゃないかもしれないなあ。怜一郎と怜司にしても、天才だ、というのと、闇を抱えている(ほんと、なんで文字で書くと、安直で、あまりにばかばかしく思えるんだろう)、っていうのは、分かるし、理解できるんだけども、なんか、それで終わり、というか、あとは、天才である、という説明の字面をつらつらと追っている、という印象がするなあ。なんでだろうな。
やっぱり、圧倒的なものを描くこと、というのはすごい難しいわけで、その圧倒さ、というのは言葉や単純な説明だけで、事足りるわけじゃなくて、説得力がどうしてもいるのだなあ。しかも、戦闘みたいな単純な結果としての強さ、圧倒的才能、とかそういうものではないから、余計に難しい。

その上、ナイーブさや闇みたいなものとかも描かないといけないわけだから、なんだか、下手するとうすっぺらくなる。そして、この話も、もちろん、そういう匂いはぷんぷんとして、そこが時々、げんなりするけれども、なんか、今回のは、純粋におもしろく感じて、それってのは、総司の(前回で醜いほんの一瞬の、ほんの一部分を見せた上での)すごい良い人っぷりで、温かくて、あまりに健康的で、実直で、それがとても心を打たれたからこそ、なのかなあ、と思って。そういう存在があることで、天才のうすっぺらさまでもが、包まれた、というか。
うまく言えないけれど。

しかし、全然、読み返さないと、他の部分がどういう話だったか忘れてしまうぜ。そんな心の闇だとか、呪われた家庭だとか、そんなんばっかりだったっけ。宮沢さんは、それを救う存在でしかないのかな。それもまた、悲しいよな。宮沢さんのキャラもあんまり分からないや。描けば描くほど、ぼやけているし、どういうことなのか、分からなくなってくるや。
そういう意味では、責任を負わなくていい、サブキャラクターの方が味があって、好きだ。彼等もまた物語を背負った時は、逆説的に、存在感が薄れていくのかもしれないけれども。

しかし、なんていうか、最後にピストルかー。
連載読んでないから、どういうことなのか、ほんとに撃ったのかどうか、気になるわー。